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「指導死」の存在認めない文科省――「先生のいじめ」と大臣 2014 年 9 月 17 日 10:26 AM 生徒指導をきっかけ、原因として子どもが自死に追い込まれる指導死。 その多くは教師のパワハラによる――昨年11月、下村博文文部科学大臣は筆者の単独取材の中で、前述の見解を容認する発言を行なった。 『サンデー毎日』に掲載される予定だったが、編集部と文科省の間で「取材はなかったこと」になり、記事化されなかった。文科省が指導死を公的に認めていないためだろうか。 下村大臣は取材でこう語った。 「教師の暴言や憎しみの言葉があったかもしれませんが、一方で、なぜ、あれ位のことで自殺してしまったのかと周りが不思議に感じるケースがあるかもしれません。教師が責められるかどうかはケース・バイ・ケースで、一つ一つを調査して分析しないといけません」 文科省は調査を実施しておらず、再発防止策もとっていない。 下村大臣は、「指導死というのは先生のいじめです。いじめ防止対策推進法は、教師によるいじめは含まないという前提はありますけども、波及効果は相当あると思います。 学校空間で起こるいじめの全てを撲滅したいと考えますので、指導死も国が基本方針を作って地方自治体に徹底します」と話した。 「指導死」親の会代表の大貫隆志さんは、「文科省が指導死を放置し続けるなか、大臣の発言には勇気づけられた」と言う。 8月1日の定例会見でも下村大臣は、「指導により子どもが自殺することがあってはならない」とした。 教育行政はこの発言を無視せず、「指導」の名のもとになされる暴行や精神的暴力により、悩み、苦しんでいる子を救う責務がある。 名古屋大学大学院(教育発達科学研究科)の内田良准教授は、「文科大臣が教師のパワハラに言及したことに意義がある。 児童・生徒への体罰は法律で禁じられているが、精神的暴力については法整備されていない。今回の大臣発言を法制化に向けるべき」と指摘する。 (桜木和美・ライター、8月29日号) |
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ジャパゆきさんから妻・母へ、 「たくましさ」と「弱者の立場」の狭間で 2014年09月16日(Tue) これまで2回にわたって、外国人女性支援組織「KAFIN」の道のりを追いながら、フィリピン人を中心とする外国人女性の直面する困難とそこから逃げ出すことの難しさについて考察した(第1回、第2回)。 一方、外国人女性とはいったいどんな存在なのだろうか。彼女たちは常に「弱者」や「被害者」なのか。あるいは、海外に出稼ぎに出て故郷の家族を助ける「したたかで強い女性」なのだろうか。最終回となる本稿では、外国人女性の揺れ動く地位について考えたい。 弱い? 強い? 「からゆきさん」と「ジャパゆきさん」 興行資格などによって来日し、エンターテイナー、ホステスとして就労してきたフィリピンやタイなどを含むアジア人女性は、「ジャパゆきさん」と呼ばれた。「ジャパンに行き」就労するからだ。 その「ジャパゆきさん」は、「からゆきさん」という存在ゆえの呼び方だ。 サイゴン在住のからゆきさん(ウィキペディアより) 作家・山崎朋子さんによる『サンダカン八番娼館 - 底辺女性史序章』(筑摩書房、1972年)には海外に出て、現地で娼婦となる女性が描かれる。 こうした女性たちは主に農村や漁村の貧しい家庭に生まれ、だまされて売られるなどし海外に出ていった人たちで、からゆき(唐行き)さんと呼ばれていた。19世紀後半、からゆきさんは国境を越え、東アジアや東南アジアの国々にわたり、現地の娼館で働いた。 『サンダカン八番娼館』には、山崎さんが元からゆきさんの家を訪問し、一緒に時間を過ごす場面が描写される。お世辞にもきれいとは言えない傾きかけた家に暮らす元からゆきさんは、やってきた山崎さんを歓迎し、そのうちに自分の話をしてくれた。 自ら話をする機会をこれまで持つことのできなかった女性の語りの中から、日本の近代における物言うことが制限されてきた女性がどんな人生を歩いて、なにを感じてきたのかが浮かび上がる。 これに対し、ジャパゆきさんは、戦中・戦後の困窮を経て、復興を迎え、その後に高度経済成長を経て、“先進国”となった日本へ、アジア諸国からやって来た女性たちだ。 社会学者の故・梶田孝道さんは、『外国人労働者と日本』(日本放送出版協会、 1994年)の中で、1970年代以降アジアの発展途上国において観光開発が進む中で、「買春観光」が拡大するなどし、「『風俗産業』の国際化がさらに進むと、むしろエンターテイナー、ホステスとして働くアジア人女性を『商品』として日本に『輸入』するという新しい段階へと移る。八〇年代前半に始まった『ジャパゆきさん』現象も、このような文脈のなかで生じた」(P146)と説明する。 続きを読む。 |
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2014年09月17日(水)
09月17日 09時41分 原発事故で被災した福島県内の自治体を支援する「福島再生加速化交付金」として、復興庁は、南相馬市など6つの市町村で災害公営住宅を整備する事業などに、あわせて99億円あまりを交付することを決めました。 「福島再生加速化交付金」は、政府が福島第一原発の事故で避難指示区域に指定された県内の自治体などを財政的に支援するため、昨年度の補正予算と今年度予算で、あわせて1600億円を計上し、復興庁は、このうち99億円あまりを交付することを決めました。 具体的には、南相馬市など福島県内の6つの市町村で災害公営住宅を整備する事業について、事業主体の福島県などに対しおよそ78億円を交付するとしています。 また、避難指示が解除され、住民が地元に戻ることを見据えた事業などを対象に、福島県や県内12の市町村に対しおよそ20億円を交付するとしていて、 内訳は、避難している企業の帰還や企業誘致に向けた産業団地の整備などに6億6000万円あまり、廃棄物処理施設の再開に向けた敷地の整備などに2億8000万円あまりなどとなっています。 |
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(2014年9月17日 ) 東京電力福島第1原発事故に伴う避難が続き、ほぼ全域が避難指示解除準備区域の楢葉町は16日、今夏に特例宿泊した町民の個人線量計の数値を基にした年間被ばく線量の推計結果を示した。 125人のうち、国が長期的な目標としている年間1ミリシーベルト未満は約25%にとどまった。 いわき市で16日開会した楢葉町9月議会で松本幸英町長が明らかにした。現状では7割以上が年間1ミリを超えるとの見通しで、国の追加除染でいかに線量を低減できるかが住民の帰還に影響を与えそうだ。 7月31日~8月16日の16日間行われた特例宿泊には、町民209世帯538人が申請。国から個人線量計の数値の報告を受けた130人から、機器の不具合などと思われる数値だった5人を除き、住民が身に着けた個人線量計の数値と実際に町内で生活した日数を基準に推計した。町は「まだ知見を集めている段階。推計に対する評価は難しい」としている。 同町では今年3月に国直轄除染を終えたが、線量の高い場所も点在しており環境省は今後町内で追加除染を行う方針を示している。 |
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(2014年9月17日) 東京電力福島第1原発事故をめぐり、政府の事故調査・検証委員会が関係者から当時の状況を聞いた「聴取結果書(調書)」の公開が始まった。 事故の真相解明に向けて重要な資料だが、今回公開された東電関係者は第1原発の 吉田昌郎元所長だけで、残る東電幹部らの調書公開が焦点になりそうだ。 政府は年内に、新たに本人の同意が得られた調書を順次公開する方針。 政府事故調は、関係者計772人を対象に、内容の非公開を前提として、計約1500時間にわたる聴取を実施。2012年7月に最終報告書をまとめた。 しかし吉田氏の調書内容が報道されたことを受け、政府は11日、吉田氏のほか、菅直人元首相ら政治家11人と官僚など政府関係者5人、学者2人の計19人分を公開した。 772人の対象者の詳しい内訳は発表されていないが、東電と政府関係者が大半を占めるにもかかわらず、今回の東電関係者は亡くなった吉田氏のみ。これまで聴取内容の詳細が明らかになっていない 清水正孝元社長ら幹部や現場職員の調書公開を求める声は強い。 東電は「個人の意思を尊重し、会社として公開の是非を示唆することはしない」(広報部)として、判断を個人に任せる方針という。 事故調委員の一人で九州大の 吉岡斉教授は「重要なのは東電本店で何が起きていたかだ。なぜ組織がまひしていたのかを検証するためにも、東電幹部は真相究明に協力する姿勢を見せるべきだ」と話している。 (共同通信) |
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【第3回】 2014年9月12日 松久信幸 世界中のスタッフに慕われるノブのフィロソフィー 世界五大陸に30数店舗を展開しながら、NOBUが高いクオリティを維持し続けている秘密はどこにあるのか? フランス人シェフのエルベ・クートットと、ノブ・レストラン・グループのコーポレート・ディレクター、田原史啓(ヒロ)に、「NOBUスタイル」と呼ばれる料理とマネジメントのスタイル、さらに根底にあるNOBUの哲学を語ってもらった。(インタビュー:ダイヤモンド社書籍オンライン編集部) 手を見せただけでシェフに採用? ―ーNOBUというレストラン、そしてノブ・マツヒサとの出会いは? エルベ 私の場合はロンドンでした。2000年ごろ、パリでレストランをオープンするためシェフを募集しており、NOBUロンドンでの面接でノブさんに初めて会ったのです。当時私は、中東カタールのドーハにあるシェラトンホテルでフレンチのシェフを務めていましたが、以前から日本に行きたい、日本料理を学びたいと希望していました。 しかし、フランス人を雇ってくれる日本料理店はありませんでした。そんななかで友人が、NOBUという有名な店がパリでオープンすると教えてくれたのです。その時までNOBUについては知りませんでした。ウェブサイトをチェックしてよいレストランだと感じました。 ノブさんとの面接はわずか10分ほど。私に「手を見せて」と言うので、「オーケー」と見せると、彼は私の手をつかんで「オーケー、採用だ」と言ったのです。後に、なぜ手を見ただけで決めたのかと尋ねると、「やけどの跡や傷痕がないかを見たんだ。 何もなければ、もう現場で調理をしてないシェフだとわかるから」とノブさんは答えました。ホテルのエグゼクティブ・シェフは調理場にあまり立たず、オフィスで過ごすことも多いのです。ノブさんのフィロソフィーは「シェフはキッチンに立って調理をしてこそ、シェフ」というもので、その価値観が私と一致したということでしょう。 エルベ・クートット:中東地域とロシアのNOBUのエグゼクティブ・シェフ。 ヒロ(田原史啓):NOBUニューヨークのウエイターとしてスタートし、ニューヨークの3店舗を統括するマネージャーからコーポレート・ディレクターに。 「あなたはフレンチのエグゼクティブ・シェフだが、すぐにシェフとしてパリに行きたいか、それともロンドンで日本料理を一から学びたいか?」とノブさんに聞かれました。 日本料理の初心者として学ぶことが私の希望でしたので、2ヵ月間、NOBUロンドンで仕事をしながらトレーニングを受けました。一番下からあらゆるセクションを見せてもらい、日本料理のコンセプトと実務を勉強したのです。ノブさんがロンドンに来たときは直接、そして多くはロンドンのシェフたちに教えてもらいました。 続きを読む。 |
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2014.09.10(水) (2014年9月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 今年の初め、投資家向けの大きな会合で「地政学的リスク」について講演する機会があった。ロシアから中東、南シナ海、ユーロ圏に至るあちこちの状況を駆け足で説明した。その後、同じように演壇に立った著名なプライベート・エクイティー投資家とコーヒーを飲みながら話をすることができたので、地政学的リスクのことをどれぐらい考えているのか尋ねてみた。 彼の返事はこうだった。「ほとんど考えませんね・・考慮するのはもっぱら会社とキャッシュフロー、投資案件そのものですよ」 戦争や地政学的混乱を尻目に活況を呈する株式市場 この人物は、マドリードまで私のジェット機でお送りしましょうかという言葉で会話を締めくくったほどの大金持ちだから、この発言を聞き流してしまうのは賢明ではあるまい。 投資家にしてみれば、政治のニュースはスポーツニュースよりは少し大事かなという程度の、いわばバックグラウンドノイズとして扱う方が理にかなう場合がほとんどだ。 1人の人間として見れば悲劇になる出来事も、投資家にとってはそれほど重要でない出来事になる。実際、シリアの戦いでは20万人近い人命が犠牲になっているが、その一方で株式市場は活況を呈している。 米ダウ平均、終値で初の1万6000ドル超え 米国や英国の代表的株価指数が記録的な高値を更新している〔AFPBB News〕 市場と政治の断絶は、ここに来て特に鮮明になっている。先週には、新聞がウクライナや中東の戦争の話、そして英国が分裂するかもしれないという話で埋め尽くされたにもかかわらず、英国のFTSE100指数は14年ぶりの高値をつけた。 その前の週には、米国のS&P500株価指数が史上初めて2000ポイントの大台を突破した。 恐らく、政治評論家がこういう話を耳にしたら、だから投資家は近視眼的なんだと苦々しい表情を見せることだろう。 しかし、それは違うかもしれない。市場の方が正しいのかもしれないのだ。もちろん、時には政治的ショックが株価をしばらくの間下落させることもあるだろう。 だが最近の経験に照らせば、株価は驚くほど早く値を戻すことが多い。例えば、2001年9月11日の同時多発テロ後の最初の週に、ダウ工業株30種平均は14%下落した。ところがダウもナスダック指数も、その2カ月後には9.11前の水準を回復していた。 「地政学的好機」に沸いてきた世界 国際政治が投資家の向こう数年間の――数カ月や数週間ではない――見通しを本当に変えてしまうということが見られなくなって久しい。筆者が思いつく限りで言えば、そういう状況は1973年の第4次中東戦争とそれを機に生じた1970年代のオイルショックの時、そして1979年のイラン革命の時が最後だ。 これ以降は、地政学的リスクよりも地政学的好機という聞き慣れない概念の方が、世界の特徴をうまく言い表す言葉になっている。 続きを読む。 |
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2014年9月17日 06:00 琉球大学大学院医学研究科の佐藤丈寛博士研究員と木村亮介准教授らを中心とする共同研究グループは琉球列島の人々の遺伝情報を広範に分析した結果、台湾や大陸の集団とは直接の遺伝的つながりはなく、日本本土に由来すると発表した。 これまでも沖縄本島地方についての研究データはあったが、八重山・宮古地方も含め、大規模に精査した点が特徴。英国に拠点がある分子進化学の国際専門雑誌「モレキュラーバイオロジーアンドエボリューション」の電子版(1日付)に掲載された。 木村准教授は「沖縄の人々については、東南アジアや台湾などに由来するといういわゆる『南方系』との説もあったが、今回の研究はこれを否定している。沖縄の人々の成り立ちを明らかにする上で貴重なデータになる」と話している。 研究では、沖縄本島、八重山、宮古の各地方から計約350人のDNAを採取。1人当たり50万カ所以上の塩基配列の違いを分析した。 また、宮古・八重山諸島の人々の祖先がいつごろ沖縄諸島から移住したのか検証したところ、数百年から数千年と推定され、最大でも1万年以上さかのぼることはないとの結果が出た。 宮古・八重山ではピンザアブ洞穴人(2万6千年前)や白保竿根田原(しらほさおねたばる)洞穴人(2万年前)の人骨が発見されており、現在の人々の祖先なのか関心を呼んできたが、主要な祖先ではないことを示している。 一方、港川人(1万8千年前)については、沖縄本島地方の人々の主要な祖先ではない可能性が高いとみられるものの、さらなる精査が必要という。 共同研究に携わったのはそのほか、北里大学医学部や統計数理研究所など。 琉球列島内で見ると、沖縄諸島と宮古諸島の集団は遺伝的な距離が比較的離れており、八重山諸島の集団が中間に位置していることも判明した。 |
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2014年09月16日(火)
2014 年 9 月 12 日 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働手続きは着々と進むが、住民の避難計画は依然として問題が多い。 とりわけ10㎞圏外の病院や社会福祉施設については計画が策定されていない。原子力規制庁もこれを容認する実態が明らかになってきた。 国の指針「共通課題についての対応指針」(2013年10月)では、「避難準備重点区域(30キロ圏内)内の、病院等の医療機関や社会福祉施設等は、入院患者・入所者の避難に関する計画をあらかじめ作成する。 この計画においては、入院患者・入所者の受入れに足る十分な避難先施設をあらかじめ決めておく」としている。また、自治体は計画通り避難が実施できない場合に備え、「調整委員会」等を事前に整備するよう定めている。 ところが8月21日、市民団体との会合の席上で原子力規制庁は、「5㎞圏外のUPZ(30㎞圏内)施設は、避難先や移動手段が決まっていなくても、事故が起きた時に調整する仕組み(調整委員会など)さえ決まっていれば可」と説明。“仕組み”について市民が問うと、「コンピュータ・システム(を想定)、詳細については確認中」とのみ答え、参加者を驚かせた。 関西電力の大飯原発や美浜原発などを有する福井県の場合、30㎞圏内のすべての病院・社会福祉施設については県がすべて受け入れ先を調整し、一覧表を作成して公表している。 「福井県では一覧表があっても要援護者の施設の避難計画は形式的であり、実際は問題が多い。しかし、鹿児島県はその形式さえも整っていない」と、美浜の会の島田清子さんは指摘する。 さらに、「原子力の規制を行なう規制庁が鹿児島県にあわせて指針を緩めるとは……。もっとも配慮しなければならない避難弱者の生命を蔑ろにするものだ」とも話す。 「再稼働」を進めるため、自らが定めた指針すら踏みにじる国や県の姿勢に、批判が高まっている。 (満田夏花・FoE Japan、8月29日号)引用元。 |
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2014/09/16 09:38 原発の発電コストは世界的には1キロワット時当たり平均14セント(約15円)で太陽光発電とほぼ同レベル、陸上風力発電や高効率天然ガス発電の8・2セントに比べてかなり高いとの試算を、エネルギー問題の調査機関として実績のある米国企業系「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」(BNEF)が16日までにまとめた。 東京電力福島第1原発事故後の安全規制強化もあって建設費や維持管理にかかる人件費などが世界的に高騰していることが主な理由。再生可能エネルギーのコストの低下が続く中、原子力の優位性が薄れていることを印象付ける結果となった。 |
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国際ニュースメディアが描く未来像 小林 恭子 :ジャーナリスト 2014年09月12日 「生き馬の目を抜く」-そんな表現がぴったりなのが英語で世界を駆け巡るニュースの世界だ。 24時間、ニュースは待ったなし。ぼやぼやしていたらライバルの報道機関やソーシャルメディアがスクープをさらってしまう。 「ツイッターをやらない記者はいらない」と発言したとされる、「BBCワールド・サービス・グループ」のディレクター、ピーター・ホロックス氏に世界に向けてニュースをすばやく発信する仕組みとBBCの将来について聞いた。 ――BBCワールド・サービス・グループのディレクター職とは? 一言で言えば、BBCの海外向けニュースの統括責任者だ。グループには国際ラジオ放送「BBCワールド・サービス」、国際テレビ放送「BBCワールド・ニュース」、英語ウェブサイト「BBCニュース」の海外向け発信などが入る。ニュースの編集基準や方針、財務にも責任を持っている。 信頼できるニュースを世界へ配信 ――BBCは世界中にニュースを発信している。英国の姿を伝えるという意味では1つの外交とも言えるのだろうか。 ある意味ではそうだ。客観的で、偏りがない、独立しているニュースの発信は英国民そして世界中の市民にとっても重要だと思っている。英国にこのような報道機関があるということで、英国に対する好印象が高まる可能性もある。ただし、好印象を作ることが目的ではない。信頼できるニュースを外に発信することが重要と考えて、そうしている。国民も支持している。 ――どのようにして世界中のニュースを迅速に報道しているのか。 世界中にどの国際ニュース局よりも多くのジャーナリストを配置している(注:113カ国に2500人余)。ただし、BBCは英国の放送局だが「英国の視点」を伝えているわけではない。世界中のすべての視点を反映させ、グローバルな見方を提供している。ロシア語、アラビア語、中国語、アフリカ諸国のさまざまな言語など複数の言語でも放送しており、世界各地の事情に詳しいスタッフがそれぞれの視点を提供してくれる強味がある。 続きを読む。 |
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2014.09.11(木) (英エコノミスト誌 2014年9月6日号) 香港の市民は完全な民主主義を要求することを諦めてはならない――香港自身と中国のために。 17年行政長官選挙制度で二分する香港 8月末に香港の特別行政府庁舎周辺で行われた民主派の集会〔AFPBB News〕 中国の政府関係者はそれを、香港の民主主義にとっての「大きな前進」と呼んだ。だが、香港政府のトップを決める選挙で初めて、すべての香港市民に投票を許すという中国当局の8月31日の発表は、市民の怒りと無関心を招いただけだった。 歓喜は全く見られなかった。それは香港市民が参政権にさほど関心を持っていないからではない。2017年に予定されている、香港の行政長官を決める次の選挙が操作されるということを中国が明白にしたからだ。立候補が許されるのは、大陸の半分ほど離れた距離にある北京の共産党が認めた候補者だけとなる。 最悪の場合、これは中国でさえ到底望まないような惨事を引き起こす危険性がある。香港の民主派は抗議行動を計画している。どれだけの人が参加するか分からないが、政治改革を求めて平和的なキャンペーンを行ってきた香港の長い歴史が、警官との小競り合いや大量逮捕、場合によっては人民解放軍による介入にも道を譲る恐れがある。 そんな事態は、アジアで最も裕福で最も秩序ある経済の1つを混乱に陥れ、中国を西側諸国と対立させることになる。 だが、たとえそうした惨事が回避できたとしても――その可能性は高い――、この前進ならぬ「横っ飛び」は、香港のみならず中国本土にとっても大きなチャンスを逃すことを意味する。中国全体の利益になったかもしれない類の地域民主主義を試す絶好の機会が失われたからだ。 これでは「1国1.5制度」 中国の発表は、1つの時代の終わりを告げる。これからはもう、たとえ北京で政治改革が進まなくても香港の民主主義はどんどん発展を遂げられると主張することができなくなった。 中国共産党が支配する全国人民代表大会(中国の議会)が定めた取り決めが必要だったのは、1997年に英国から香港が返還された時に、中国が香港に「高度な自治」と、ゆくゆくは「普通選挙権」を与えると約束したためだ。大方の人にとっては、これは自分たちの手で自分たちの指導者を選ぶことを意味した。 中国はこの約束を字義通りに守ったが、その精神は守らなかった。2012年には、香港の政財界のエリートから選ばれた共産党のイエスマンから成る1200人の委員会によって香港の行政長官が任命された。2017年の選挙では、同じような委員会が候補者を選び、次に、候補者を香港の全有権者が参加する選挙に提示する案が示されている。 理論上は、委員会は多様な政治思想を持つ候補者を選ぶことができる。だが実際には、悲観論はこのうえなく正当だ。出馬を許されるのはわずか2~3人の候補者で、どの候補も委員会の過半数の推薦を取り付けなければならないからだ。 続きを読む。 |
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「他と異なることの恐れ」 メール通信「昔あったづもな」 第20号 小澤俊夫 (小澤昔ばなし研究所所長) 一部引用・・ 田宮は戦争中の日本を反省的に振り返って、「国民一人一人が他人と意見が異なることを恐れて、自分の意見を言わなかった。それであんなに政府による統制を招いてしまったのだ。これから民主的日本を建設していくには、一人一人が自分の意見をはっきり言わなければならない。そういう自主性が求められているのだ」という趣旨のことを書いていた。ぼくは強く共感した。 なにしろ、個人主義という言葉自体が敵性国家の言葉で、悪そのものと教えられていたのだから、他人と異なる意見を言うことなど、普通の人間にはできることではなかったのだ。 お上の言うことにひたすら従うことが当たり前だった。お上と言っても実際は役場の役人か町の支配者に過ぎないのだが、他と異なることを言うのは、危険なことだった。 当時、国防婦人会という、女性を統制する組織があって、ときどき国防訓練があった。母はまじめに参加していたが、何をするかというと、竹槍でB29爆撃機を突き落とす訓練をするのだそうだ。 そんなこと、誰も信じてはいないのだが、軍人が指導するので、笑うことはできない。 他と異なる言動は許されないのだ。我が家では父が軍部に強く批判的な人間だったので、あきれていたし、父は批判を口にしていた(そのために、我が家には常に立川署の特高課長が出入りしていたのだが)。 全文を読む。 |
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水島 宏明 法政大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター 高市早苗総務相らの写真が欧米で広く報道された。 2014年09月12日 16時17分 JST 共同通信が書いているが、先週就任したばかりの高市早苗総務相と自民党の稲田朋美政調会長と右翼団体「国家社会主義日本労働者党」代表の2ショット写真。同団体のホームページに一時公開されていたのをイギリスの高級紙ガーディアンが書いた記事の転載だったが、日本政府の国際的な評判を一気に落としてしまった。 高市氏らが極右代表と写真 海外主要メディアも報道 第2次安倍改造内閣で総務相に就任した高市早苗衆院議員や、自民党の稲田朋美政調会長ら国会議員3人が、極右団体代表の男性と議員会館で会い、ツーショットで撮った写真が団体のホームページに一時公開されていたことが9日、分かった。議員側は「男性の人物像は知らなかった」と説明した。 団体は「国家社会主義日本労働者党」で、ホームページにはナチス・ドイツの象徴「かぎ十字」やこれに似たマークを数多く掲載。 出典:共同ニュース もとになった団体のHPを見ると、最初のページに「我々はより優れた人種だ」という英語の文章やハーケンクロイツ(ナチの象徴の「かぎ十字」マーク)などがある。 最初に報じたガーディアンの電子版には、高市氏や稲田氏が同団体の代表と一緒に映っている画像が掲載されている。 Pictures from Japanese neo-Nazi Kazunari Yamada’s website show him posing with Shinzo Abe’s internal affairs minister, Sanae Takaichi, and his party’s policy chief, Tomomi Inada. Photograph 出典:ガーディアンのホームページ 私もイギリスに長く駐在した経験があるが、イギリスの新聞が日本の閣僚に関連するニュースを大きく取り上げることは滅多にない。しかも写真付きというのは異例の扱いと言ってもいい。 なぜ、このようなことになったのか。 思うに、右翼団体と言っても、今回の団体は日本に数多くある民族主義右翼とは名称が異なるからだ。 単なる民族的な右翼団体の名称であれば、これほど大きな問題にはならなかっただろうと思う。 なぜならその団体名に入っている「国家社会主義」、 英語にすると「National Socialism」、ドイツ語だと「Nationalsozialismus」という言葉。 欧米社会では名乗ること自体が許されない存在として人々の間で定着している。 続きを読む。 |
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知事選に向けヒートアップする本土・沖縄関係 一部引用・・ つい先日、泡盛を飲みながら安全保障が専門の大学教授から聞いた話に、思わず筆者はのけぞってしまった。ある日、国際政治学会の大御所に呼ばれた会合に出てみると、テレビなどでもお馴染みの外務省キャリア外交官がいた。日米外交交渉の実態を聞き取りしよう、という会合だった。 「日本の対米交渉はどうですか」。大御所が尋ねた。すると、米軍普天間返還をめぐる交渉にも深く関わったキャリア外交官はこう答えたそうだ。「米政府が考えていることを言い当てることです」。 対米外交での無作為が沖縄問題を複雑にする その場がしばらく沈黙に包まれた。同席した研究者らは言葉を失う。会合を主催した大御所もしばし所作を失う。「君たちに議論はないのかね」と大御所が苛立つ。キャリア外交官は「米側の意向に沿って大筋決まります」と淡々と語ったらしい。 いやはや、こんなものだろうか。信じがたいが、これが日米交渉の実態だとすると、選挙でいくら民意を示しても基地問題は変わらない。 確認するつもりで、別の国際政治研究者にこのエピソードを話してみた。てっきり、のけぞり、怒り、落胆すると思いきや、反応はいたってクールだ。「いまさら……、その大御所もナイーブな人だね」。どうやら対米外交は交渉しないことらしい。 全文を読む。 |
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「日本は物価が高い」は今やむかし・・・? 久しぶりに訪れたアメリカは 物価高で驚きの連続だった!という話 9月初旬に出張で米国のボストンとニューヨークを訪問した。 ちょうど出発する1週間ほど前に、休暇で米国に行ってきたという友人とランチをする機会があったのだが、その際に「アメリカのいろんなものが高く感じた。日本がデフレを続けている間に、海外の物価が相対的に高くなったことを体感させられた」という話を聞いた。 「どれどれ、いかほど高くなったのだろう・・・?」と思いながらの今回の米国出張だったが、結論としては、まさにその通りであった。これで、円安にでもなろうものなら、海外旅行が高嶺の花となってしまいかねない・・・。 久しぶりの米国訪問は驚きの連続!写真はマンハッタン上空から。手前に見える緑の公園がセントラルパーク。その向こうに見えるビル群で一番高いのがエンパイアステートビルディング。先端はウォール街方面で高いビルは建て替えられたワールドトレードセンター(著者撮影) 水が2ドル!?(150~200円) 早速であるが、日常的に利用するものの価格感から話を始めると、水の値段だ。 500ミリリットルのペットボトルがコンビニで買うと1.5ドルから2ドルする。空港で買うと3ドルであった。日本円にすると150円~200円ということで、べらぼうには高くない印象も受けるが、13年前にニューヨークに住んでいた際の感覚では79セント程度であったと思う。 もちろん値段は店によって異なり、道ばたの露店では1ドルで売っているところも見かけることができた。よって一概には言えないが、コンビニで水に2ドルを払うのは負担感が大きい。 物価上昇のチリツモのインパクトは大きい 次は地下鉄である。 ボストンもニューヨークも乗る距離に関係なく一律料金なのだが、それぞれ2.65ドルと2.5ドルかかる。日本の場合は距離に応じて運賃が高くなるので、簡単な比較はできないが、やや高い印象ではないだろうか? ご存知の方も多いように、ニューヨークの地下鉄は東京のそれと比べると清潔さ、定時運行度合い、快適さにおいて明らかに劣る。しかし、2.5ドルする。 この数字だけでは分かりにくいと思うが、私が13年前の2001年、ニューヨークに住んでいた際は、地下鉄の料金は1.5ドルであった。10年ちょっとでなんと67%も値上がりしたのか!とびっくりするわけだが、1.5ドルから2.5ドルへの上昇をこの13年間の年率上昇率として計算すると、年率4%ずつ値上がりをしたことと等しい。 毎年数パーセントずつでも物価が上がれば、ある程度の期間が経つと、モノの値段は結構上がることになる。一方の日本は同じ期間デフレであったため、モノの値段は下がる一方であった。相対的にアメリカの物価が高く感じるわけだ。 もっとも、円に換算する場合は、為替の影響を受けるため、最終的な割高感(あるいは割安感)は時期によって異なるが、少なくともドルで過去との対比でみた場合は、「うわっ、上がったなあ」と感じざるを得ない。 同じことは、エンパイアステートビル近くのコリアンタウン(韓国街)で食事をした際にも感じた。現地の知り合いと二人で夕食を取ったのだが、ビビンバ、チヂミ、プルコギ、ビール1杯ずつで100ドル超えである。 感覚的には70~80ドルかなと思っていたので、なぜに?と思ってレシートを見てみると、ビビンバ、チヂミ、プルコギはすべて20ドルを超えている。13年前に住んでいた時の感覚では、どれも15ドル程度だ。決してファンシーな店ではなく、普通の韓国料理屋さんである。日本で同じものを食べても6000円程度ではないかと思われる。それが100ドルオーバーだ。 このようにあげるとキリがないが、さまざまな場面で「高いなあ」と思うことが多く、ボストンで現地の人と話していた際に、「日本って物価が高いんでしょ?」と聞かれた際には、“it used to be but not anymore(かつてはね)”と答えざるを得なかった。 続きを読む。 |
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終活は余生の過ごし方と死に方を考えるきっかけに 2014.09.10(水) 「終活」という言葉を初めて聞いた。「就活」ではない。死ぬための準備活動のようなものらしい。 早い話が、自分の死んだときにあとの人が困らないよう、なるべく自分で事前に、整理できるものは整理、準備できるものは準備しておきましょうというようなことだ。それには、家のガラクタの整理から、財産目録や遺言状の作成、お葬式やお墓のこと、遺産の相続と、結構いろいろなことが含まれる。 思わず膝を打った「終活」という言葉 実は5~6年前から、私は、なるべく身軽になりたいという衝動に駆られていた。もう、物は要らないと思ったのだ。 そうでなくても、結構若いころから、なるべく身軽に、なるべく少なく、という気持ちが、強迫観念のようにどこかにあった。冷蔵庫が空っぽで、その日に食べるものだけをその日に買ってお料理できれば幸せだと、いつも思う。 だから、「終活」という言葉を聞いたときは、これだ!と思った。はっきりと死など意識したわけではなかったが、私がここ数年目指していたのは、まさに「終活」だったのだ。 自分にとっては大事でも、他人にとってはゴミと同じというものはたくさんある。夏目漱石なら、たとえ買い物メモでも価値があるかもしれないが、私の手紙や日記など、何の意味もない。 そもそも私の場合、自分で読むことさえもないのだ。そういう文書や写真、使わない物、それは、死ぬ前に、私自身が責任をもって処分したいと思う。自分たちと何の縁もない、知らない人ばかりが写った写真など残されては、娘たちが困るだろう。 その結果、4年ほど前、長年住んだ家を手放し、以後の生活の場は、シュトゥットガルトの町の真ん中の小ぢんまりとしたフラットに移した。快適だ。それ以来、本と資料だけは、油断するとあっという間に増殖するが、他はかなり制御できていると思う。 食器は、普段使いもお客さん使いもなく、好きなものだけにした。ただ、洋服だけは、かなり減らしたとはいえ、まだ衣装ケースが2つ地下室にあり、冬物と夏物の入れ替えが必要だ。次の目標は、すべてを半分にすること。部屋にある収納スペースに、1年分の衣装がすっぽり収まるようにしたい。 両親の家を整理してみたら・・・ 去年から今年にかけて、東京の両親の家を整理した。まだ2人とも健在だが、年を取ったので、郊外の一軒家には住めなくなってしまったのだ。 その家は、誰が見てもびっくりするほど物が多かった。1階も2階も、そして庭にまで、あらゆるスペースに、必ず何かがぎっしりと詰まっていて、ほとんど零れ落ちそうになっていた。そして、それらのほとんどが、ゴミとガラクタだった。 続きを読む。 |
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『娼婦たちから見た日本』を読む 鰐部 祥平 :HONZ 2014年09月13日 娼婦。その存在はいつの時代も様々な点で男たちを惹きつけてきた。実直な青年と高級娼婦の愛を描いたデュマ・フィス著『椿姫』や映画『プリティーウーマン』などの作品に私も惹きつけられた。これらの作品に出てくる娼婦は、自堕落な生活を送りながらも本当は純真な心を奥底に秘めた哀れな社会の犠牲者として描かれていることが多い。 多かれ少なかれ、男というものは女性に対して神秘的なものを感じている。金銭の対価として、その美しい肉体を差し出す女性たちに男は下卑た視線を向けながらも、彼女たちがその神秘性と、可憐で清らかな心を失わずにいて欲しいと願っている。 だが、このような虚像をはぎ取った実際の娼婦とはどんな人々なのであろうか。本著は日本に関わる娼婦たちを日本国内に限らず、タイ、チリ、シンガポール、インドネシアと世界各地で取材した力作である。 家族のために異国の地へ 単純に言ってしまえば、彼女たちが苦界に身を沈めたのは貧困のためだ。横浜の黄金町界隈で、たちんぼうしていたタイ人娼婦ユリは肺を悪くした高齢の父と産後の肥立ちの悪い妹を養うために日本で体を売る。 同じくタイ人娼婦ワラポンはエイズに感染し、病気の末期には高熱で憔悴しきった体を引きずりながら新宿や横浜の界隈に立ち、仕送りを続けた。日本で命を引き取る瞬間までお金を送らねばと言い続けたという。 「家族のため」それが彼女たちに共通する思いだ。娘を異国の地の男たちに差し出して、その金で暮らす親や兄弟とはどんな人々なのかと感じてしまう。むろんそれは私たちが恵まれた社会に生きているから感じることなのかもしれないが。 著者も気になったのであろう。ワラポンの実家を訪ねている。かなりの額を送金していたはずのワラポンの実家の中には、家財道具などがほとんど見られず、母親が極貧のままで暮らしていた。ワラポンが送った金はどうしたのかと著者が尋ねると「宝くじを買ってなくなったんだよ」と答えたという。 娘が文字どおり命を削って仕送りしていた金は、ギャンブルに消えていたのだ。この言葉の中に貧困というものが抱える闇の深さがうかがえる。 続きを読む。 |
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