2010年1月4日月曜日

地球と生命/その進化  その7




7) 恐竜から霊長類に至る進化過程

ベルム紀末期に起こった火山大噴火の痕跡は西シベリアから中央シベリア高原にかけて広く分布する溶岩(シベリア洪水玄武岩)にみられる。この大噴火によって大気中の二酸化炭素が増加し、地球の温暖化が始まった。海水は温度の上昇により、海底に分布していたメタンハイドレートを融解し、その結果、大気中に膨大なメタンガスをもたらした。このメタンガスの温室効果により更なる地球の温暖化が起る。

(画像はガスデハイドレート、下の白い塊りがメタンハイドレート)
この悪循環により、植物が壊滅的打撃を受けたことと、メタンガスが酸素を消費することによって、大気は低酸素状態に陥った。(それまでの酸素濃度が30%以上であったのに対して、この後の1億年近くの間10%程度にも落ち込んだとされている。)

この低酸素環境に優れた適応をして君臨したのが爬虫類から出た恐竜である。恐竜が生まれたのは2億2500万年前とされ、カンブリア紀からそれ迄を古生代と言われるのに対して、恐竜が出現して以後、恐竜の絶滅する6500万年前迄を中生代と称される。

中生代は3時期に分けられ、最初の三畳紀にはカメ、ワニ、魚竜、首長竜、恐竜などが生息し、中でも恐竜が最も発展した。恐竜は後に鳥に継承される特殊な呼吸器官である「気嚢システム」を作って低酸素の中でも高い活動能力を維持した。また、この時期に哺乳類の祖先が出現している。

次のジュラ紀は温暖で安定した気候の時期で巨大恐竜が出現した。低酸素環境に適応進化したのは爬虫類だけではない。哺乳類の祖先は卵ではなくて胎生で子供を生むことと、横たわって母乳を子供に与える独特の生育システムを作ってこの低酸素環境に適応した。胎生は体内で赤血球を噴射して胎児に酸素と栄養を与えることができ、また、横隔膜が出来たことによって肋骨の下半分がなくなり、身体をねじった姿勢で母乳を与えることが出来るようになった。(横隔膜は哺乳類が呼吸効率の改善のために進化させたシステムである。)

こうして、哺乳類は次世代への未来を切り開くことができた。即ち、火山大噴火による低酸素環境が結果として、恐竜と哺乳類を発展させたとも言えよう。

中生代最後の白亜紀は地球のプレート活動の活発な時期で、大陸の大移動が行われ、この時に北米大陸が分離されて、北米は乾燥化が進む(約1億年前)。この時期、被子植物の台頭がみられる。そして、この時期の末期に何らかの原因で恐竜が絶滅する。{注8}

恐竜が絶滅した6500万年前に中生代が終わり、新生代が始まる。それまでは恐竜から身を潜め、日陰者として生きてきた哺乳類の時代が始まるが、そこに現れた哺乳類の敵は空から舞い降りてきた鳥であった。一部の鳥は巨大化して食肉鳥となり、特に北米~ヨーロッパに君臨した巨鳥ディアトリマは哺乳類祖先の天敵として、哺乳類の繁栄を抑えた。

ただ、当時は地球史上最も大陸が四散していた時代であったため、唯一、巨大鳥が存在しなかったアジアで食肉獣が発達・進化し巨大化することが出来た。このアジアで進化した食肉獣ハイエノドントはアジアと北米が陸移動できるようになって北米大陸に渡り、ディアトリマを滅ぼした。そして、このときから哺乳類の時代が本格的に幕を開けたのである。

人類の直系祖先にあたる哺乳類の中の初期霊長類(原猿類として区別されるキツネザル、メガネザルなど)は巨大鳥、巨大獣を避けて樹上に活路を見出した。即ち、新生代の初期は急激な温暖化が進み、森林が巨大化したため、木から木への移動が可能となり、果実、木の実を食することにより、危険な地上に下りる必要がなくなった。そして、霊長類は北米大陸において一大繁栄の時期を迎える。

しかし、超大陸バンゲアから北米大陸が分離されて以来、北米は乾燥化が進み、霊長類は北米から消滅する。以来、霊長類の進化はヨーロッパ、アフリカ大陸に移り、3500万年前にヨーロッパとアフリカにおいて真猿類が出現する。

中新世の末期に当たる約1000万年前、更なるバンゲアの分裂が進み、現在の南極大陸が南米やオーストラリア大陸と分離し、南極点に到達、孤立した大陸となったため、赤道からの暖流が遮断され、地球は次第に寒冷化し、乾燥化した。アフリカの熱帯雨林は縮小、乾燥し、北部が砂漠化した。

このため霊長類はアフリカ熱帯雨林以外では次第に住処と食料を失って、ヨーロッパのサル類達(真猿類){注9}は完全に消滅し、ゴリラ、チンパンジーらはアフリカ大陸東部の南北に亘る森林に留まった。アジア南部ではオランウータン、テナガザルが残る。

アフリカの熱帯降雨林で生き延びた霊長類に起こった進化は“フォベアによる高い視力”の獲得であった。フォベアは角膜の中で視細胞が集中している所であり、その発達により高い視力と色別力(中間波長の感知)でエサを効率的に見出すことが出来た。この眼の進化は豊かな表情を創りだし、お互いの表情を見分けることによってコミューニケーションが生まれ、そこに“共に生きる”社会(群れ)を構築する道筋が出来た。しかし、その後の地球乾燥化の進展による熱帯雨林の縮小に伴い、800万年前にサバンナへ進出した類人猿{注10}は、次第に直立二足歩行をすることによって遠距離を歩いて食糧を求めなければならなかった。

ここに人類の祖先が誕生する素地が生まれたことになる。当地には600~700万年前のこの種化石(オロリン、サヘラントロプス)が報告されている。

{注8}:恐竜が絶滅した原因は未だ確定されてはいないが、巨大隕石の衝突説が有力視されている。それは恐竜絶滅の6500万年前の地層(C/TまたはK/T境界層)に普通の100倍の濃度のイリジュウムと多量のススが発見されている。このイリジュウムは隕石の同位体比に一致している。 この説は1980年科学誌「サイエンス」に始めて発表された。隕石落下地点の候補は陸ではアメリカ・アイオア州、インド・デカン高原、海ではポルトガル沖のトーレが挙げられている。また、メキシコのユカタン半島説もある。

{注9}:真猿類:原猿類から進化した霊長類。一般に“サル類”と言われ、ニホンザルや東南アジア系ではテナガザル、オランウータンなど、アフリカ系ではチンパンジー、ゴリラなどがこれに入る。

{注10}:類人猿:これまでより複雑な脳、大きな体格を持ち、尾がない霊長類(真猿類)で、小形動物を食べることはあるが、主に草食。歯は現代人と基本的に同じ。

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