2010年1月4日月曜日

地球と生命/その進化  その5


<地球と生命/その進化>    荒木泰治

5) 大型多細胞生物の誕生

地球上の生命は約6億年前までは殆どが微生物(単細胞バクテリアなど細菌類)のままであったとされる。それが大きくなるきっかけは何であったのか?未だ最終結論は出ていないが、これに答えるのがハーバード大学ホフマン教授らの提唱する「全球凍結」(スノーボール)仮説である。

これによると、地球は22億年前と6億年前の二回、海も陸も全てが凍りついたという。その凍結原因は十分確立されてはいないが、微生物が関与する光合成が生み出す酸素が当時の大気中で温室効果のあったメタンガスを減少させ、凍結を招いたという。

この時、海は深さ1000m以上凍結したとされ、光合成が不可となり、大部分の微生物は死滅した。このとき、完全絶滅の危機を救ったのは、海底火山の火口付近に存在した穴の中の微生物であった。

殆ど全面の海面が凍結したことにより、火山ガスの二酸化炭素ガスは水に溶け込めず、大気に蓄積され、その保温効果で次第に再温暖化に向かった。

こうして、地球が50℃を超えたとき、全球融解が突如始まり、それを引き金にして、光合成細菌の大繁殖が始まることになる。光合成の活発化は大気の酸素濃度を激増させた。22億年前の凍結までに存在したバクテリアは一般に原核生物と呼ばれているが、その後の酸素の増加に対応して21億年前に生まれたのが真核生物{注6}である。

そして、約10億年前にはカナダの藻類化石、東シベリアの藻類などに見られる真核多細胞生物が現れ、更に、6億年前の凍結後には大型多細胞生物が誕生した。

即ち、この時に一層の酸素増加が起こり、コラーゲン(たんぱく質の接着剤)が大量生産され、これが硬骨格生物の出現を促し、生命の大型化をもたらしたと考えられている。

この時代は原生代末のベンド紀(6.2-5.5億年前)と呼ばれ、世界各地で体長1mにも及ぶ“くらげ”状の大型生物や、長さ数センチの石灰質殻、また、海綿骨針(珪酸質骨格)といった生物が出現している。

これに伴い、他の生物を捕食(肉食)する生物が出現し、感触器、運動能力(酸素呼吸能力)の発達が促される。この時代は特にV/C境界(ベンド/カンブリア境界)とも呼ばれている。

こうした地球の環境大変動はこれに限らず、後述する度重なる環境変動に対抗して生命は新たな機能を生み出しながら進化を遂げてきた。地球変動は人間を始め、現在の地球生命を生み出す原動力であったといえる。
{注6}:真核生物:単細胞でも細胞小器官を持ち、大きさが10倍位ある。核内にDNAが保護されている。酸素を呼吸する器官があり、有機物を分解しエネルギーを得るミトコンドリアを有するものが動物へ進化し、光合成する器官(葉緑体)を持つものは植物へ進化した。

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