2010年1月4日月曜日
地球と生命/その進化 その1
(From NASA、Astronomy Picture of the Day Archive)
<地球と生命/その進化> 荒木泰治
1) 太陽系の誕生と地球
銀河系宇宙では星の誕生、死亡は日常茶飯事(30年に一度位)とされる。46億年前、その中の一つの星が死んだ。そして爆発=超新星の誕生である。
ガス、チリから成る星間雲に衝撃波が走り、そのガス、チリが集まり密度が増加、重力を支えきれなくなって収縮が始まる。その中心部では解放された位置エネルギーにより原始太陽が高温に輝き、その周囲の原始太陽星雲は自転運動をしている。このガス雲は主に水素とヘリウムから成り、扁平に広がって、円盤状のガス星雲(原始惑星雲)を形成する。
原始惑星雲は次第に冷却し、そこに鉱物粒子を析出する。析出するのは高温からカルシウム、アルミを有する鉱物、そして金属鉄、マグネシウムや鉄の珪酸塩、更に温度が下がると水、メタン、アンモニアなどが出る。これら析出物を含むチリは円盤状の赤道面に堆積し、合体、収縮(時に分裂)を繰り返して、微惑星となり、互いに衝突をしながら惑星に成長する。この惑星の形成は46億年前の1千万年から1億年間になされたと考えられている。{注2}
太陽系の惑星を分類すると、太陽に近い地球型惑星(水、金、地、火)と、遠くにある木星型惑星(木、土)、天王星型惑星(天王、海王)、それと地球型と木星型の中間に位置する小惑星群とに分けられる。これらは異なる衝突、融合、破壊のプロセスにより出来たものである。
地球型惑星では衝突速度が大きく、脆い岩石類は破壊されて、鉄・ニッケル合金が合体、成長した。この惑星は硬い岩石の地表を持ち、水星を除いては大気を持つ(金、火の大気はCO2が主)。火星内部には水もある。
木星型惑星では衝突速度が小さく、岩石も合体し、氷として存在した水、メタン、アンモニアを集めて成長した。原始惑星群を捕獲してガスに包まれている。
地球形成の機構に関して諸説が出されているが、1986年“Nature”誌に発表された東京大学松井・安部両氏の「衝突脱ガス大気形成に基づく惑星起源論」は世界の注目を集めた。
これは原始地球への微惑星の衝突(1年間に1千個位)が原始地球の揮発成分の蒸発を促し、原始大気を作ったとする考えに基づく。そのときの大気の主成分は水蒸気(80%)と二酸化炭素であった。この大気の存在が地球形成に重要な役割を持つ。
即ち、衝突エネルギーを完全に保存できるとすれば地球は1万度以上になり全部揮発しガス惑星となる。一方、大気がなければ熱は直ちに放散されて、0℃以下になるであろう。大気を得た原始地球ではこの衝突エネルギーの適度な保存によって地表は鉱物が溶けてマグマ化し、マグマの海を作った。そこでは溶融マグマと、その溶融鉱物から脱ガスされたできた大気中の水蒸気分圧がその時の温度、圧力において化学平衡する。
一方、その温度は微惑星の地球への衝突頻度とそれによって生じる大気量(保温効果)によって変化するので、マグマの海の量もそれに応じて変化する。
地球型惑星といわれる4つの惑星(水星、金星、地球、火星)の中で地球だけが何故、水惑星として生命を育むような奇跡が起こったのであろうか。
原始地球の半径が現在の45%に近づいた頃には衝突回数が減り、大気量は頭打ちをし、水蒸気量も頭打ちをしたとし、その結果、地表温度が一定化(1250℃と計算)し、マグマの海は10%程度に減少したという。そして約43億年前、地球のマグマオーシャンは完全に固化したといわれる。松井氏の計算によると、この時の大気は100気圧以上で、水蒸気大気量は1.9x10の21乗kgと計算された。この計算は微惑星の水量を1%以下と推定したものだが、この結果は現在の地球表面の水の量が1.9x10の21乗kgであることと良い一致を示している。
微惑星の衝突が減少して水蒸気大気量が安定した条件で、太陽光の透過率を考慮して地表温度を計算した結果は600Kとなる。200気圧での水の臨界温度は650Kであるから、この臨界温度以下に大気温度が下がった場合、水蒸気は雲を作り、それが水となって原始地球に雨を降らすことになる。雨が降って更に地表温度が下がれば更に雨が降る。こうして10の21乗kgの水が地表に出来て海となる。グリーンランドの地球最古の岩石の調査で、少なくとも38億年前には既に原始の海が出来ていたと考えられ、その温度は150℃位とされる。
その結果大気の水蒸気が減り、二酸化炭素が残る。海は塩素を含む酸性でCa+,Mg+,Na+を解かして中和しながら二酸化炭素を溶解する。これにより、大気量、大気圧が減少。二酸化炭素は岩石として固定されて更に減少して、原始大気の主成分は窒素となる。それからは地球自身の内部活動(プレートテクトニクス)と関連し次第に現在の大気へと変化する。そのプロセスは原始水蒸気大気が形成された経緯に比べて、その10倍以上の長い、長い期間を必要とした。
水星は太陽に近すぎて大気を持たず、鉄・ニッケル合金の塊(地球のコア部)で表面温度は400℃~-170℃。金星は最も地球に似ているが太陽との距離の差が進化を異にした。ここには大気があり、90気圧、組成は96%CO2+3%強N2(水蒸気は高温のため分解してH2が逃げ、O2は地表に入ってCO2が残った)を有する。火星は1日が24時間で季節もありその点で地球に似ている。大気圧は1/100気圧、95%CO2+3%N2+微水蒸気である。地表に酸化鉄粒子が存在し、地殻がワンプレート故に火山は巨大である。流水があったと思われる跡があるが、現在の火星表面には水はない。その水が無くなった理由については、地球に比べて、太陽との距離差、大きさの違いも指摘されているが、惑星との衝突で地表の水が吹っ飛んだという説もある。
地球だけが水惑星になりえた条件は偶然に決まったとしか言えない原始地球の大きさ、太陽との距離、原始大気の水蒸気とCO2の量比、そして“マルチプレートテクトニクス”(地殻がいくつかのプレートに分かれており、それぞれが運動する)などが挙げられている。
原始地球の大気は水蒸気200気圧、CO2が50気圧で、水蒸気の臨界温度は650Kである。大気圧がそれよりずっと高ければ地球に雨は降らなかった。地球の地盤が火星のような一枚板でなく、マルチプレートであったために大陸の移動、成長が起こり、その下のマグマ活動を引き起こし、原始地球の大気圧、大気量とその組成が決定された。
即ち、太陽系において地球だけが地表に水を持てる条件を奇跡的に有していたのであり、その水が後述の生命を育ます必須条件であったのである。
{注2}:現在の太陽系の質量の99%が太陽で、角運動量の98%以上が惑星の公転運動による。続く
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