2010年1月4日月曜日

地球と生命/その進化  その2


<地球と生命/その進化>    荒木泰治
2) 隕石の衝突

微惑星の衝突から形成された原始惑星に対して、未だ宇宙を浮遊していた破片や、成長できなかった微惑星が引力に引かれて惑星に衝突する。これが隕石の衝突である。40億年前は隕石重爆撃期であった。

月の形成機構にも諸説はあるが、地球に衝突した微惑星によって作られたとする説が最も有力視されている。月表面の岩石調査と月面クレーターの観察から、地球から見る月の現在の姿は46億年前から約10億年間に起こった月面への隕石衝突と、その内部のマグマ活動とによって説明される。

また、月面のクレーターを語ることは宇宙の謎解きであるともいわれる。即ち、月面の地域年代とクレーターの個数密度から隕石衝突頻度の時代推移も明らかにされた。月面の明るい部分は“高地”と呼ばれ、斜長石が多く、初期に存在したマグマの海が冷却して出来た。暗い部分は“海”と呼ばれ、玄武岩が主である。

これは隕石の衝突によって出来た割れ目からコア部のマグマが流出して出来たものとされる。高地の斜長石の年齢は38.5億年、玄武岩の年齢は38~37億年で、それ以後は隕石衝突が減ったため海の部分にはクレーターが少ないと説明される。クレーターは全ての惑星に見られ、これが隕石衝突の痕であると現在結論付けられている。{注3}

隕石には二種類あり、一つは一旦溶融した後、鉄系と岩石系とに分化したものと、もう一つは“コンドライト”と称される未分化隕石(各成分が熱的平衡状態にない)ものである。コンドライトは鉄分の量やその状態で区別され、鉄が酸化状態で、還元されておらず、その中でも炭素質なものを“Cコンドライト”と呼ばれ最も始原的な隕石である。

地球で目撃された最古の隕石落下は1492年に記録されている。それはドイツのエルザス地方エンシスハイムの隕石(50kg)。現存する最大隕石は1920年南西アフリカに落ちた60トンの“ホバ隕石”(鉄)である。


隕石は天からの贈り物として、宗教的に扱われることが多い。即ち、古代ギリシャの“聖なる石”、イスラム教のメッカ・アーバ神殿の”メッカの黒石“、福岡県直方市の須賀神社に納められている宝物”飛び石“などがある。近年、落下が観測された重要な隕石としては1969年メキシコ北部チワワ州に大音響と共に落ちた“アイエンデ隕石“(Cコンドライト)と、同年オーストラリア南東部ビクトリア州に落ちた“マーチソン隕石“(鉱物の中にかなりの量の水を含む)がある。
隕石の年代測定は長寿命放射性同位元素により行われるが、その多くが46億年±1000万年前であった。つまり、マーチソン隕石の水は46億年前の水であり、アイエンデ隕石の調査では、その中の酸素同位体(O16,O17,O18)の割合が太陽系のものとは違うことから太陽系以外の超新星爆発による星間雲から来たものと考えられ、アイエンデ隕石が超新星爆発の証言者であると松井氏は言う。

隕石の地球への衝突速度は秒速15kmと推測されている。例えば、直径30mの鉄隕石が衝突した場合、その体積の1万倍以上の岩石を吹き飛ばし、直径1200m、深さ180mの巨大なクレーターを作る。この時に走る大気中の圧縮波、地面中の衝撃波により発生するエネルギーはTNT火薬にして4~5メガトンに相当する。そして、このエネルギーの大きさは衝突する隕石の大きさによって指数関数的に増大する。

従って、このような衝突一つが地球に大規模な気候変動を与え、そこに存在していた生物に大きな影響をもたらして来た。言い換えれば、太陽系第3惑星として、水惑星である地球の形成、進化の奇跡には隕石の地球への衝突が重要な因子の一つとなっていると考えられる。

{注3}:クレーターの成因については火山噴火説との間で長く論争されてきたが、アポロ計画による月面探索と試料採取、及びNASA研究所による大型衝突実験から隕石衝突説が証明された。

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