2010年1月4日月曜日

地球と生命/その進化 その9 (完) 荒木泰治 著

9) 総括 ― 地球と人間/その行方 ―

奇跡的とも言える環境条件から生まれた水惑星の地球で、これも偶然に生じたとしか考えられない化学反応によって生命が誕生した。その生命増殖の根本には太陽エネルギーがあり、太陽光に基づく光合成反応によって物質とエネルギーが創り出された。光合成なしには地球上の全ての生物の存在はあり得ない。

この生命は40億年の歴史の中で、地球上で起こった気候変化、火山噴火、隕石衝突などの変動により幾度かの大量絶滅を繰り返しながら、そして又、弱肉強食の生存競争を続けながら進化を遂げてきた。

地球上の生物で植物だけが葉緑素の光合成反応によって、炭酸ガスと水から、自らの栄養分(エネルギー)を、自ら合成できる唯一の生物である。その栄養分を草食動物が食べる。草食動物は肉食動物に食べられる。これら植物、動物が死ねば細菌類と菌類(葉緑素を持たない生物で“カビ”や“きのこ”など)によって分解され、炭酸ガスと水が作られる。

これが地球上で行われている生命サイクルである。人間はこの中にあって、発達した頭脳を駆使することによって、この自然サイクルを制御、或いは破壊できるまでに科学を発達させて来た。

奇跡的な環境の下、その中で偶然に発生したと考えられる地球と人間ではあるが、2000億個もの恒星が輝いていている広大な銀河系宇宙に、他にも人間のような高等生物が存在するのではないかと想像するのは当然である。

それに関して、米国コーネル大学からドレークの式として1960年に発表された。その式は2000億個の恒星をベースに、幾つかの確率と、恒星とその上の文明の寿命に仮定を与えて計算するものである。これによると、この銀河系宇宙には1000のオーダーの文明が存在することになる。

ただ、その文明間の距離が100光年あったとすれば文明の寿命が100年程度だと文明間の交信は出来ず、お互いにその存在を認識できないことになる。

地球人類は今日、宇宙に向けて、その存在を発信・受信できるほどの文明を持てる段階にあり、更に進歩を続けている。さて、この地球上の人間は今からどれだけ持続できるのであろうか?

国、民族、宗教間の対立と争い、目先の利害にとらわれた乱費と乱開発による天然資源の枯渇、そして無節操な排出による自然環境の破壊、人口増加に伴う食糧の危機などが近未来の地球の問題である。これまで育んできた人類の英知が、反面、これからの地球と人類の破滅を速めことになってはならない。

地球の未来について書かれた著書「フューチャー・イズ・ワイルド」によると、これまで氷河期は10万年サイクルで起こっており、その中で約1万年間が間氷期であり、現在がその間氷期にあたるという。(現在の地球は最後のウルム氷河期が明けて既に約1万年経過している。)また、本書は地球の気象変化から、人類が滅んで大型動物の時代が来るとも予測している。

氷河期が来るのが先か、今話題の温暖化が先か、或いは食料、資源の枯渇が先かは別として、近未来の人類にとって難問が幾つか予想される。しかし、人類の素晴らしい英知は必ずやこれら問題を乗り越えるであろうと筆者は信じる。

今世紀の人類の課題は目先の利害にとらわれず、これら地球規模の問題解決のための志向である。その方向としては、地球環境保護の更なる徹底は勿論、致命的大規模自然災害の予知と対策、人工的な光合成技術の開発、更に進んでは、地球外惑星(火星など)の改造を含む宇宙開発の推進などが挙げられる。

以上

主の参考資料

宇宙と生命の起源 -ビッグバンから人類誕生までー:嶺重慎・小久保英一郎共編 (2004)岩波書店(ジュニア新書)

生命と地球の歴史: 丸山茂徳・磯崎行雄共著 (1998)岩波書店(岩波新書)

地球・宇宙・そして人間: 松井孝典著 (1987)福間書店

地球大進化(第1集~第6集): NHKスペシアル 2004年4月~12月放送

人類の進化史: 植原和郎著 (2004)講談社

生命40億年全史: リチャード・フォーティ著、渡辺政孝訳 (2003)草思社

フューチャー・イズ・ワイルド:ドーガル・ディクソン、ジョン・アダムス著、松井孝典監修 土屋昌子訳 (2004)ダイヤモンド社

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