2011年2月5日土曜日

「岱風句抄」 その5


柿がいろづき地味な着物の人がゆく

柳の葉のちるところ籾舟が着いた

ちゃぶ台大きくて寺の座敷秋立つ

雪が荒れてくる青空四囲が雪の山脈

早春茶を呑んでいて静かなる山に対す

    古稀賀莚 七十年を顧みて

畠はこべが青しわが身のまわり

      慈雲寺

夕立一過 松が雲を呼ぶかのおもい

    
    一碧楼師句碑除幕式 二句

水平らかの句碑なり こゝ野菊の丘

先生すたすた来るおもい 木の柿色づき

    耶馬溪羅漢寺  二句

鶯鳴いて居て落ちそうな岩がうしろ

山みづ百丈の岩を伝って落ちる青い冬草

    香椎宮  二句

春のうすら雪にこぼれて居る椎の実

帽子ふかくかぶり並木椎の木

 
      悼   泊 雨川

水は流れゆく百日草つぎつぎと咲く

おとろえのからだを立って見る地に雪の下の花 

道のべあかざほほけたり足よわりたり

        妻と共に病む

蝿を追ってやる枕並びていてもどかしく

まだおとろえぬ気魄紫陽花色替えて咲く

          絶句

秋めく布団にいて世の中へ感謝している 



   岱風翁   追悼句  

青い柿の一つが落ち晩が来た              鵞水城

ミシン今は主なくして残暑厳しく             不雪郎

しのび来し秋とつれ立ち岱風仏              沢 瀉

下駄のゆるい緒が行くとなくこほろぎ草に啼く      黙 天

八剣社の残暑群ら雀鳴きやめた             松 平

この句岱風さん水鉢苔深く唐沢の秋           羽 人

ひとり露草をふまず無の空へくる秋           博 敏

雨待ちて雨降り葱枯るる日                柿葉村

八ヶ岳に秋きし細い杖ついて立ちしか          満寿雄

百日草今日もその形夕べとなる              青 樹

ものもの音なし冷えて秋の湖星が流れる         霞

雪に消えて一人立つ地の冷えて鳴く虫          まなぶ

雨雲月をおおい冷気われを抱く              正比古

御霊送る二百十日の念仏会                蔓 橋

五十年の友逝きにけり秋の空               机 遊

二百十日その日岱風のぼり逝く              浪 舟

生活世を逝く世に野花実の尽きず             二 松

庵の月遺稿を修す人ありて                 雪 人

夕日かげし鴨跖草ぬれ咲くを見て佇つ          和 美

秋めくみづうみの青さひろさ岱風さんいない       蒲公英

   鴨跖草(おうせきそう)ーツユクサ

あとがき



奥付け
色紙








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